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【司法書士が解説】認知症による銀行口座凍結を防ぐ「予約型代理人サービス」とは?成年後見・家族信託との違いも徹底比較
親の預金が引き出せない!認知症で銀行口座が凍結される理由
日本は世界最速で高齢化が進展し、高齢者の5人に1人が認知症になる時代を迎えています。「親が認知症になったら、銀行口座が凍結されて預金が引き出せなくなる」という不安を抱える方は少なくありません。実際に、生活費が支払えず介護サービスの利用に支障が出るケースも発生しています。
なぜ銀行は口座を凍結するのか?
銀行が認知症に伴う口座凍結を行う理由は、主に2つあります。
- 1. 本人の財産を守るため
- 認知症によって判断能力が低下すると、特殊詐欺や悪質商法の被害に遭いやすくなります。金融機関は被害防止の観点から、判断能力が不十分な顧客の取引に制限をかける義務があります。
- 2. 家族間トラブルに巻き込まれないため
- 「子どもが親の代わりに引き出した」としても、それが本当に本人の意思なのか、他の家族が納得する保証はありません。金融機関は家庭内紛争の原因となる要素には関わりたくないため、口座を停止します。
代理人カードでは凍結を避けられない
一部の銀行では「代理人キャッシュカード」を発行していますが、これは身体的な不自由を補助するためのもの。判断能力が失われた場合には、代理人カードでも口座は凍結されてしまいます。
従来の対策は2択:成年後見制度と家族信託
認知症による口座凍結への対策として、従来は以下の2つが主な選択肢でした。
1. 成年後見制度(法定後見・任意後見)
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。
法定後見制度
判断能力が不十分になった後に、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
- メリット:法的な取消権があり、本人の財産を確実に保護できる。
- デメリット:手続きに時間がかかり、専門職への費用が発生する場合が多い。
任意後見制度
判断能力が十分なうちに、将来の管理者をあらかじめ契約で決めておく制度です。
- メリット:自分の信頼できる人を自由に選べ、希望を反映しやすい。
- デメリット:取消権がなく、元気なうちに公正証書での準備が必要。
詳細はこちらの解説記事をご覧ください:
任意後見契約(将来の安心のために)
2. 家族信託
契約により財産の管理を家族(受託者)に移し、認知症後も家族が管理を続けられる制度です。
- メリット:本人の認知症後も柔軟な管理が可能。不動産管理にも強い。
- デメリット:設計が複雑で専門家のサポートが必須。初期費用がかかる。
詳細はこちらの解説記事をご覧ください:
家族信託(認知症 相続への備え )
新しい選択肢「予約型代理人サービス」とは
「もっと手軽に口座凍結を避けたい」というニーズに応え、近年メガバンクを中心に導入されています。
事前登録
判断能力があるうちに銀行で手続きします(原則2親等以内の親族)。
診断書の提出
判断能力が低下した際、代理人が医師の診断書を提出します。
取引開始
ATM・窓口での入出金や定期解約など、幅広い手続きが可能になります。
各制度の比較と選び方
| 項目 | 予約型代理人 | 成年後見・家族信託 |
|---|---|---|
| 手続き | 銀行窓口で簡単 | 裁判所または公正証書 |
| 費用 | ほとんど無料 | 専門家報酬・手数料あり |
| 対象資産 | その銀行の預金のみ | 不動産を含む全財産 |
こんな家庭に最適です
- 成年後見・家族信託ほどの手間や費用はかけたくない
- 預金さえ動かせれば生活に支障はない
- 主な資産が預貯金で、不動産は少ない
- 家族間の信頼関係がしっかりしている
導入している主な金融機関
- 三菱UFJ銀行:「代理人指名手続」
公式サイト詳細はこちら - 三井住友銀行:「任意代理サービス」
公式サイト詳細はこちら
※他行については直接お取引のある金融機関へお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
予約型代理人サービスは、本人の判断能力が低下した後でも契約できますか?
いいえ、できません。このサービスは本人に「判断能力があること」が前提となります。認知症が進み、ご本人の意思確認ができない状態になると手続きができなくなるため、お元気なうちの対策が重要です。
銀行の代理人カードとは何が違うのですか?
代理人カードは主にATMでの利用を想定したものです。予約型代理人サービスは、診断書の提出により「窓口での定期解約」や「諸届の変更」など、より広範な手続きを代理人が行えるようになります。
不動産の売却も代理人が行えますか?
いいえ、このサービスはあくまで「その銀行の預金」に限定されます。不動産の売却や他の財産管理が必要な場合は、任意後見や家族信託の検討をおすすめします。


