
更新日:2026年4月3日
司法書士による法改正解説
2026年4月3日、政府は成年後見制度と遺言制度の見直しを盛り込んだ民法改正案を閣議決定しました。成年後見制度が2000年4月に施行されて以来、約26年ぶりの大きな見直しです。早ければ2027年から2028年頃には新制度がスタートする見込みです。
これまで「使いにくい」と言われてきた成年後見制度が、
👉 「必要なときに、必要な範囲だけ使える制度」へ
大きく変わろうとしています。
本記事では、最新の閣議決定の内容をもとに、変更点と実務への影響を分かりやすく解説します。
この記事のポイント
- 成年後見制度のこれまでの問題点
- 改正の最大ポイント:終身制の廃止と補助への一本化
- オーダーメード型の支援と柔軟な終了手続き
- デジタル遺言の創設について
目次
成年後見制度のこれまでの問題点
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した方の財産や生活を守る重要な制度です。しかし、現行制度には大きな問題がありました。代表的なものが次の3点です。
- 一度利用すると原則としてやめられない
- 後見人の権限が広すぎる
- 本人の意思が十分に反映されにくい
例えば、相続手続きのために制度を利用した場合でも、その後の財産管理まで後見人に任せ続ける必要がありました。
その結果、
👉「必要以上に制限される制度」
👉「一度使うと戻れない制度」
として利用をためらう方が多かったのが実情です。
改正の最大ポイント①「終身制の廃止」
今回の改正で最も重要なのが、「終身制の廃止」です。従来は、一度後見が始まると原則として本人が亡くなるまで続いていました。
しかし改正後は、以下の目的が達成されれば終了可能となります。
- 相続手続き
- 不動産売却
- 施設入所手続き
家庭裁判所が「必要性がなくなった」と判断すれば、制度を終了できる仕組みが導入されます。つまり、「一生続く制度」から「目的達成で終わる制度」へ大きく転換されます。
改正のポイント②「補助への一本化」
現行制度では「後見(重い)」「保佐(中間)」「補助(軽い)」の3類型に分かれていました。しかし今回の改正では、すべて「補助」に一本化されます。
そのうえで、「本人の判断能力」「本人の同意」「利用の必要性」を前提に、家庭裁判所が個別に内容を決定します。
改正のポイント③「オーダーメード型へ」
これまでの成年後見は、包括的な代理権(何でもできる)という仕組みでした。しかし改正後は、必要な行為だけ代理権を付与し、支援範囲を個別に設定する形になります。
例えば、「預金の管理だけ」「不動産売却だけ」といった限定的な利用が可能になります。本人の自己決定権を尊重する方向へ大きく舵が切られたといえます。
改正のポイント④「終了・変更が柔軟に」
改正後は、家庭裁判所が職権で終了できたり、家族からの終了申立てや後見人の交代も柔軟に行えるようになります。また、すでに旧制度を利用している方も、新制度への移行や終了が可能とされています。
改正のポイント⑤「デジタル遺言の創設」
今回の閣議決定では、新たにデジタル遺言(保管証書遺言)が創設されます。パソコンやスマートフォンで作成し、法務局がデータを保管する仕組みです。これまで自筆が原則だった遺言に比べ、作成のハードルが大幅に下がると期待されています。
司法書士としての実務ポイント
① 一時利用が可能になる
相続や不動産売却など、「スポット利用」が現実的になります。
② 申立内容の設計が重要に
支援内容が個別化されるため、「どこまで代理権を付けるか」の設計が非常に重要になります。
③ 家族信託との使い分けがより明確に
後見制度は柔軟になりますが、財産承継の自由度や長期的な資産管理では家族信託が有利な場面もあります。今後は最適な制度選択の提案力が問われます。
まとめ|制度は「使いやすさ重視」へ
今回の改正は、「本人のための制度」に戻す改正です。これまでの「強い・広い・長い」制度から、これからは「必要な分だけ・必要な期間だけ」使う制度へ変わります。
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